AI業界で注目の手法、RAGとは?LLMチャットボットにおける活用方法を解説!

今回は、自然言語処理の分野で注目を集めているRAG(Retrieval-Augmented Generation)について、初心者の方にもわかりやすく解説していきたいと思います。

RAGは、今話題のチャットボットの性能を大きく向上させる手法として知られています。また、大規模言語モデル(LLM)の言語生成における「ハルシネーション」と呼ばれる問題の軽減にも効果があるとされています。

本記事では、RAGの基本的な仕組みや、チャットボットへの活用方法について詳しく説明していきます。さらに、RAGがハルシネーションにどのように影響するのかについても解説しますので、ぜひ最後までお付き合いください!

1章 RAGの概要

1-1 RAGとは?

RAGは、Retrieval-Augmented Generationの略で、大規模な外部知識ベースを活用して言語生成を行う手法です。従来の言語生成モデルでは、学習時に与えられたデータセットのみを基に文章を生成していましたが、RAGでは関連する情報を外部から入力し、それを利用することで、より知識に基づいた回答が可能になります。

わかりやすく解説すると、従来のチャットボットは作られる際に入れられた学習データを基に考えて回答を出しておりRAGでは与えられたデータから参照して回答を出しているという違いがあるのです。

1-2 RAGのメリット・デメリット

RAGを使うことは、従来の手法と比べてどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

最新情報や独自の情報を答えられる

一般のチャットボットは最後に与えられた学習データ以降の情報を知ることはできません。そのため、答えた情報がどの時点での情報であるかによって情報の信憑性は変わってきてしまいます。また、一般向けに利用することを前提として作られているのでもちろん会社の情報などの一般に公開されてはいけない情報はチャットボットもデータを持っていないため知ることができません。

一方で、RAGを使うことで情報に変更があるたびにそちらの情報を外部から加えることで常に最新の情報を回答させるようにできます。さらに、会社の社内情報を学習させればその会社の業務内容に特化したチャットボットとして社内で運用させることもできるのです。

ハルシネーションを抑えられる

言語生成モデルにおいて、「ハルシネーション」と呼ばれる問題があります。これは、モデルが学習データにない情報を生成してしまう現象で、例えば、実在しない人物や場所、出来事などを言及してしまうことがあります。

RAGでは、外部知識を活用することで、このハルシネーションを軽減できると考えられています。関連する情報を知識ベースから取得し、それを基に文章を生成することで、より事実に基づいた内容になるからです。

ただし、RAGを使用する際は、知識ベースの品質や網羅性にも注意が必要です。偏った情報や誤った情報が含まれていると、かえってハルシネーションを助長してしまう可能性があります。

RAGを実用可能にする難易度が高い

RAGはただ、外部データを与えるだけでは使えるようになりません。大まかな流れは後ほどご紹介しますが、チャットボットが検索しやすいように与えるデータを整えたり実際に実用できる精度であるかを確認・改善する必要があるのです。

こちらにはそれなりの技術や費用がかかる場合があります。そのためRAGには少しばかり敷居の高さがあるかもしれません。

1-3 RAGの仕組み

RAGの仕組みは以下のようになっています。

  1. ユーザーからの入力を受け取る
  2. 入力に関連する情報を外部知識ベースから検索・取得する
  3. 取得した情報を言語生成モデルに組み込む
  4. 言語生成モデルが、入力と外部知識を基に文章を生成する
RAGの模式図

画像出典 :Microsoft

この一連の流れにより、RAGは入力に関連する知識を活用した、より自然で情報量の多い文章を生成することができるのです!

2章 RAGとチャットボット

2-1 チャットボットにおけるRAGの活用

近年、チャットボットは様々な分野で活用されるようになってきました。カスタマーサポートや店舗での接客、学習支援など、その用途は多岐に渡ります。

こうしたチャットボットにRAGを導入することで、以下のようなメリットが期待できます。

  • ユーザーの質問に対して、より的確で詳細な回答が可能になる
  • 幅広い知識を活用することで、多様な話題に対応できる
  • 最新の情報を取り入れた会話が可能になる
  • ハルシネーションを軽減し、事実に基づいた応答ができる

    AzureやAWSなどをサービスを利用してRAGを使ったチャットボットを作るケースが多いようです。

     

    2-2 RAGを活用したチャットボットの開発

    それでは、RAGを活用したチャットボットを開発するにはどのような手順が必要なのでしょうか。ここでは、大まかな流れを説明します。

    • 外部知識ベースの構築:チャットボットに活用する知識を収集・整理する
    • 検索システムの実装:ユーザーの入力に関連する情報を知識ベースから検索するシステムを開発する
    • 言語生成モデルの選定:RAGに適した言語生成モデル(GPT-3など)を選ぶ
    • RAGの実装:検索システムと言語生成モデルを組み合わせ、RAGを実装する
    • チャットボットUIの開発:ユーザーとのインタラクションを実現するUIを開発する

      こうした手順を踏むことで、RAGを活用した高性能なチャットボットを開発することができます。ただし、実際の開発では、より詳細な設計や技術選定が必要になるでしょう。

      先ほど述べたように、データを整理する必要があるからです。大量の文書を読み込ませた場合、それらを適切な分量(チャンク)に分割する必要があります。これの分け方によってもRAGの精度は変化すると言われています。

      このような試行錯誤を繰り返すとRAGを用いたチャットボットの作成はかなりの時間がかかると予想されます。

      2-3 RAGを活用したチャットボットの応用例

      RAGを活用したチャットボットは、様々な場面で応用できます。ここでは、いくつかの具体的な例を紹介しましょう。

      • カスタマーサポート:製品やサービスに関する質問に、詳細な情報を提供できる
      • 教育支援:学習者の質問に対して、関連する知識を提示し、理解を深められる
      • 医療相談:症状や治療法について、信頼できる情報を提供できる
      • 旅行アシスタント:目的地の観光情報や交通手段について、最新の情報を案内できる
      • 社内チャットボット:社内の情報や文書を入力しておけば、従業員が業務上で確認したいことをチャットボットで確認可能

        これらは一例ですが、RAGを活用することで、より専門的で詳細な情報を提供できるチャットボットが実現できます。今後、さらに多様な分野でRAGを活用したチャットボットが登場することが期待されます。

        3章 RAGの課題と今後の展望

        3-1 RAGの課題

        RAGは言語生成の性能向上に大きく貢献する手法ですが、いくつかの課題もあります。

        • 知識ベースの構築:大規模で高品質な知識ベースを構築するには、多大な時間と労力が必要
        • 検索の効率化:ユーザーの入力に関連する情報を高速かつ的確に検索する技術が求められる
        • 知識の統合:複数の情報源から得た知識を整合性を保ちながら統合するのは難しい
        • プライバシーとセキュリティ:知識ベースに個人情報が含まれる場合、適切な管理が必要

        これらの課題を解決していくことで、RAGはさらに発展していくことが期待されます。

        3-2 今後の展望

        RAGは、自然言語処理の分野で大きな注目を集めており、今後もさらなる発展が期待されています。

        • 知識ベースの自動構築:機械学習を活用し、自動的に知識ベースを構築する技術の開発
        • マルチモーダルRAG:テキストだけでなく、画像や音声なども活用したRAGの実現
        • 個人化されたRAG:ユーザーの嗜好や状況に合わせて、パーソナライズされた応答の生成
        • 説明可能なRAG:生成された文章の根拠を提示し、説明可能性を向上させる

        これらの方向性に沿って、RAGの研究開発が進むことで、より高度で実用的なチャットボットが実現されていくでしょう。

        4章 まとめ

        今回は、RAG(Retrieval-Augmented Generation)について解説していきました。RAGは、外部知識を活用することで、より知識に基づいた自然な文章生成を可能にする手法であり、チャットボットの性能向上に大きく貢献します。

        また、RAGを導入することで、ハルシネーションを軽減できることも大きなメリットの一つです。ただし、知識ベースの品質や検索の効率化など、技術的に求められるハードルもある程度存在するのが現状です。

        今後、RAGの研究開発が進むことで、より高度で実用的なチャットボットが実現されていくことでしょう。個人化やマルチモーダル化など、様々な方向性が期待されています。

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